マクロ経済学経済成長と景気循環さわって学ぶ

ハロッド=ドーマー・モデルの実験室

経済が「ちょうどよい成長」から少しだけ外れると何が起きるのか。そして、外れ続けた経済はどうやって引き返すのか。数値を動かしながら確かめるシミュレーターです。

このモデルの考え方

企業の投資には二つの顔があります。投資をすると、設備や建物の注文が増えてその年の需要が増えます。同時に、出来上がった設備は翌年からの生産能力を増やします。ハロッド=ドーマー・モデルは、この二つが釣り合いながら経済が成長できるか、を考えるモデルです。

貯蓄率s
所得のうち使わずに貯める割合。需要は「投資 ÷ s」の大きさになります(乗数効果)。
正常産出資本比率σ
設備1単位を無理なく動かしたときに生み出せる生産量。逆数 1/σ が「資本係数」です。
資本蓄積率g = I/K
投資 I が設備の量 K の何%にあたるか。設備が毎年どれだけの速さで増えるかを表します。
設備稼働率δ
実際の生産 ÷ 設備を正常に動かしたときの生産。1より大きければ設備が足りない、1より小さければ設備が余っている状態です。
保証成長率g* = sσ
需要の伸びと生産能力の伸びがぴったり釣り合い、稼働率がずっと1に保たれる成長率。
自然成長率gf = μ + n
労働生産性の伸び μ と労働人口の伸び n の合計。完全雇用を保てる経済の伸びの上限です。

企業は稼働率を見て、次の年の投資の伸びを決めると考えます。これを定式化したのが、ハロッド=置塩型投資関数です。ここに不安定さの種があります。

需要が強い→稼働率が上がる→設備が足りないと判断→投資を増やす→需要がさらに強まる

パラメータ

資本係数 v = 1/σ
稼働率が1からずれたとき、投資の伸びをどれだけ大きく変えるか
試してみよう
  1. 「g₀ = g*」を押して再生。何も動きません。
  2. 「+0.1%pt」を押して再生。わずかなずれがどうなるか見てください。
  3. 「−0.1%pt」を2回押して、下にずれた場合と比べます。
保証成長率 g* = sσ
保証成長率からのずれ
ずれの拡大倍率 1 + β/(sσ)
ずれが2倍になるまで
最終期の稼働率 δ

今年の資本蓄積率から来年が決まる

横軸が今年 gt、縦軸が来年 gt+1。太線はハロッド=置塩型投資関数から決まる関係、細線は「今年と来年が同じ」を表す45°線で、交点Eが保証成長率 g* です。太線で来年の値を読み、45°線で横軸に戻す、を繰り返すと階段状の経路になります。

投資関数45°線経路

資本蓄積率 gt

gt保証成長率 g*

設備稼働率 δt = gt / (sσ)

δt正常稼働 δ = 1

なぜ離れていくのか

ハロッド=置塩型投資関数は「稼働率が1より高ければ投資の伸びを上げ、低ければ下げる」という企業の行動を表したものです。式にすると gt+1 = gt + β(δt − 1)。需要は投資の 1/s 倍なので稼働率は δt = gt/(sσ) となり、これを代入して保証成長率 g* からのずれで書き直すと、ずれは毎年 1 + β/(sσ) 倍になります。この倍率は必ず1より大きいので、どんなに小さなずれも拡大します。需要が強いと稼働率が上がり、設備不足だと判断した企業が投資を増やし、それがさらに需要を押し上げる。ずれを打ち消す力がモデルの中にありません。

gt+1 − g* = (1 + β/(sσ)) · (gt − g*)

ただし、資本蓄積率が際限なく上がったり、マイナスに沈み続けたりすることは現実にはありません。この流れを逆転させる仕組みを加えたのが、2つ目のタブ「天井と床で生まれる循環」です。