経済が「ちょうどよい成長」から少しだけ外れると何が起きるのか。そして、外れ続けた経済はどうやって引き返すのか。数値を動かしながら確かめるシミュレーターです。
企業の投資には二つの顔があります。投資をすると、設備や建物の注文が増えてその年の需要が増えます。同時に、出来上がった設備は翌年からの生産能力を増やします。ハロッド=ドーマー・モデルは、この二つが釣り合いながら経済が成長できるか、を考えるモデルです。
sσg = I/Kδg* = sσgf = μ + n企業は稼働率を見て、次の年の投資の伸びを決めると考えます。これを定式化したのが、ハロッド=置塩型投資関数です。ここに不安定さの種があります。
横軸が今年 gt、縦軸が来年 gt+1。太線はハロッド=置塩型投資関数から決まる関係、細線は「今年と来年が同じ」を表す45°線で、交点Eが保証成長率 g* です。太線で来年の値を読み、45°線で横軸に戻す、を繰り返すと階段状の経路になります。
ハロッド=置塩型投資関数は「稼働率が1より高ければ投資の伸びを上げ、低ければ下げる」という企業の行動を表したものです。式にすると gt+1 = gt + β(δt − 1)。需要は投資の 1/s 倍なので稼働率は δt = gt/(sσ) となり、これを代入して保証成長率 g* からのずれで書き直すと、ずれは毎年 1 + β/(sσ) 倍になります。この倍率は必ず1より大きいので、どんなに小さなずれも拡大します。需要が強いと稼働率が上がり、設備不足だと判断した企業が投資を増やし、それがさらに需要を押し上げる。ずれを打ち消す力がモデルの中にありません。
ただし、資本蓄積率が際限なく上がったり、マイナスに沈み続けたりすることは現実にはありません。この流れを逆転させる仕組みを加えたのが、2つ目のタブ「天井と床で生まれる循環」です。
実際の生産 Y は、需要で決まる量 (I + A)/s と、働き手全員が働いたときの生産 Yf(天井)の小さい方になります。正常産出 σK は設備を無理なく動かしたときの生産で、Y がこれを上回れば設備不足、下回れば設備過剰です。
雇用率は働き手のうち実際に働いている割合で、1(完全雇用)が上限です。稼働率は設備に対する生産の割合で、1を超えると設備不足を意味します。
企業の投資は1つ目のタブと同じハロッド=置塩型投資関数で決まり、稼働率が1より高ければ投資の伸びを上げ、低ければ下げます(ĝt は実際に実現した資本蓄積率)。これに二つの壁を加えています。上の壁は労働力で、働き手がいなければそれ以上は生産できません(天井)。下の壁は、設備の更新などで不況でもある程度は続く投資です(床)。また、政府支出や輸出のように設備を増やさない需要 A が、経済の実力に合わせて伸び続けるとしています。